「レジャー白書2017」によれば、2016年における日本の登山人口は650万人(*1年間に1回以上活動した人数)と推定されています。男女とも60歳代以上の比率が高くなっています。老若男女が楽しめる登山ですが、定年後の趣味としている方々が多いということなのでしょうか。
一方、警視庁生活安全局地域課の統計によれば、平成30年(2018)の山岳遭難件数は2,661件・遭難者3,129人(うち死者・行方不明者342人・負傷者1,201人・無事救助1,586人)で、発生件数・遭難者数ともに過去最高値となった昨年よりも更に増加しています。遭難者の内訳は40歳以上が78.5%、この内60歳以上が50.5%を占めています。
遭難発生は、登山(ハイキング・スキー登山・沢登り・岩登りを含む)時が74.0%と最も多く、山菜きのこ採り時が12.3%でした。状況としては道迷いが37.9%、次いで滑落17.4%、転倒15.0%となっています。
日本山岳救助機構会員制度(略称jRO/ジロー)は、山を愛する方々の相互扶助の精神に基づく新しい会員制度で、万が一会員が事故や病気などで遭難した場合、捜索や救助に関わる費用(捜索救助人員の日当・交通費・宿泊費・食費・消耗品費・搬送費・謝礼費など)を補填(支払い)するものです。
日本山岳救助機構合同会社によって運営されている当制度は、平成20年(2008)4月にスタートし、今年(2019)11年目になりました。初年度7,000人弱の会員から、現在は80,000人を超える会員数になっています。
対象は日本国内の幅広い山行スタイルをカバーしています。登山(沢登り・岩登り・縦走など)・各種クライミング・ハイキング・キャンピング・トレイルランニング・マウンテンバイク・山スキー&スノーボード・渓流釣りから山菜きのこ採りまで、用具・季節・年齢を問わず幅広い分野をカバーしています。(ただし、海外は対象外)
近年、行方不明遭難が数件発生しており、捜索救助活動も数次に渡り実施されるのに伴って費用も高額化傾向にあり、従来の限度内では十分補填できないケースが見られるようになりました。そんな状況を考慮し、今年(2019)4月1日より補填金額の上限が330万円から550万円に増額されました。
ただし、保険や共済ではありませんので、死亡や傷害・治療費についての給付金はありません。また、遭難とは事故や病気・ケガで自力移動ができなくなった状態のことで、自力で動けるのに「疲れたから」「日程が遅れたから」などの理由に基づく場合は、遭難とは認められません。
書面あるいはWEBにてお申し込みができます。初年度は入会金2,000円と年会費2,000円の合計4,000円(消費税別)をお振込みください。1年ごとの更新で、次年度は年会費2,000円(消費税別)に事後分担金が加算されます。
事後分担金とは、1年間にjROが補填した捜索救助費用の総額を会員数で割って算出した金額で、これまでの実績は900円~300円となっています。
なお、入会金と年会費は団体割引(10名以上)および家族割引があります。
「『私は遭難しない』『遭難するような場所には行かない』『遭難なんて考えたこともない』そう思っている方々が実は多いんです。遭難しないなんて根拠はどこにもありませんし、里山を歩いていて道に迷って遭難した事例もあります。」
そう注意を促すのは、日本山岳救助機構(jRO)代表の若村勝昭さん。
「槍ヶ岳や穂高連峰などを目指し緊張感をもって行動している時には、案外事故は少ない。むしろ登り終えてやや緩やかになったところで、気も緩んで事故が起きるケースがあります。統計的に、午後2時過ぎの事故発生が多いですね。」
危険は身近なところに潜んでいて、過信や慢心・油断が思わぬ遭難事故につながるということを改めて認識しましょう。
今までに日本百名山のうち80ほどの山に登ったという若村代表に、登山の魅力をお伺いしました。
「やはり達成感でしょうかねぇ…。征服なんて言うのはおこがましいですが、またこの場所に立つことができたという達成感・満足感ですね。」
「槍・穂高、蝶ヶ岳から上高地に下りてきて、梓川の川沿いを家内と二人で歩いていると、山の素晴らしさをつくづく実感しますね。」
目指す山に応じた装備・準備とともに、もしもに備える心構えをもって出掛ければ、安心して登山を楽しむことができます。登山はよく人生に例えられますが、年齢や体力などを考慮しながら自分に合ったペースで、できれば一人ではなく仲間や家族と一緒に登山を楽しめれば最高ですね!