山登りを始めたのは40代前半なのでちょっと遅めですかね。妻が富士山に登る計画を立ててましてね...。当初は山にもそれほど興味はなく、富士山に登ろうなんて思ってもいませんでした。でも富士山に登るためには、最初どこどこの山に行こうだとか登山ツアーに参加しようだとか、徐々にひき込まれまして...。実際富士山に登るころには山登りが好きになっていましたから、それからは積極的に計画を立てて妻と一緒にいろんな山に出かけています。
山の何が魅力かといえば、まずは達成感ですよね。それは富士山でも槍でも剱でも、それこそ地元に近い高尾山や奥多摩の山でもいいんですが、山頂に行くとか行かないとかは別として、自分の体力のちょっと先まで行けたという達成感。それが楽しいと思えるので10年以上続けられているのかなって思いますね。
剱岳とか険しい山に登るときは身の安全を考えながら、ちゃんとペースを守って歩きますけれど、普段の山歩きでは何か見つけたらその場ですぐ写真を撮りますね。例えば高尾山なんかにはよく行きますが、草花が多いので写真を撮ったり花の名前が分からないものは後で調べて少しずつ覚えたりとか、それも楽しみの一つです。スマホで撮るんですが大概の花の写真はこの中に入っていますよ。
星と出逢ったのは小学一年生の時ですね。私の父がビクセンの役員だったこともあって、自宅に望遠鏡の試作品がいくつもあったので、それを段ボール箱から出して家の庭に置いてよく覗いていました。子どもながらに重たいので、普通だったら危ないとか壊しちゃいけないとか言われそうなんですけど、壊れたら直せる人がいるんで、割と自由に触ることができました。
当時はそれが何という名前の星かも知らずに、明るい星に筒を向けて、レンズの中に浮かんできたものを見て楽しむという遊びをよくやっていました。
50年ほど前の所沢は結構暗くて星が良く見えましたね。自宅が駅から2kmくらい離れたところにあったんですが、電車の音も聞こえたくらいですからその間に(音を遮る)建物がほとんどなかったってことですよ。高層ビルもありませんでしたから(星を見るのに邪魔な)灯りも少なくて。
そうしたらある時、覗いた星に輪っかがあるじゃないですか!
発見した!って思いましたね、すごいものを見つけたと。今まで小さな点でしか見えてなかったものが、そうじゃない形で浮かび上がってきた。この感動体験は今でも忘れられないですね。急いで友達を呼びに行って、すごいもの見つけたからちょっと来いって言って二人で一緒にその星を見たんですよね。その友達とはそれ以来50年の付き合いです。
ホームページにも載せてありますが、「ビクセン」はサンタクロースのソリをひくトナカイたちの一頭からとった名前です。私がまだ生まれる前の話で伝え聞いたところによると「光友社」という会社だった当時、ブランドを作ろうということで、そのブランド名を社内公募したらしいんですね、会社名ではなくて…。
今でこそ公募は一般的な手法ですけれど、昭和30年頃の当時としてはユニークな試みだったと思いますね。その後昭和45年(1970)にブランド名「ビクセン」が社名となりました。
我々の造っているものは光学機器で、それは自然を観察するための道具なんですけれども、そもそも道具って主体にはならないじゃないですか。道具は何かをする時の ために必要なものであって、その「何か」をちゃんと応援していかないと道具の意味がなくなると思うんですよね。
我々は自然観察するための道具を造っているので、肉眼で見たものとレンズを通して見たものとを比較して、不思議だなと思ったり何故なんだろうと思ったりして調べてみる、そんなふうに繋がっていけばいいですよね。
ただ道具を造って満足するのではなく、自分達の造っているものに意味を持たせるためには、その道具をどういうふうに使ってもらいたいのかをちゃんと伝えていかなければいけない。
社の行動指針に掲げている「星を見せる会社」というのは、実は足元の地球も含めて…という意味があって、星空だけじゃなくてこの地球も見せようということなんですね。例えば槍ヶ岳の頂上のような視界を遮るものが全くないところに立って周りを見渡すと、地球だなって感じがするじゃないですか。
夜でも、高いところの山小屋に泊まって星空を眺めたり月明かりに照らされた山々を見たりすると、地球という星に立って星空を見上げている感じがしますよね。
だから「星空」を見せるのではなくて「星」を見せる会社、というのが本当の意味合いなんです。
上高地には「入る」というイメージがあると先ほど言いましたが、車も通れないし夜に 限ればそこから出られない。(*補足)
ここから出られないということは、ここで過ごすしかないってことですから、星を見る時間というのは凄く贅沢な時間じゃないかなと思いますね。閉ざされた空間で夜をじっくりと過ごす。時間もゆっくりと流れていきます。
星を見るのにハードルとなっているのは「星を見てもよく分からない」ということ。そのハードルを下げるために星空観察会などで星の解説をしていますが、でもそれは一つの解決方法で、それが全てではないと僕は思っていて...。
よーく見ていると分かってくることがあるので、解説がなくても楽しめる環境を作りたい、というのが本当のところなんですよね。
今朝は奥穂に朝陽があたってモルゲンロートを見ることができましたが、山肌の凹凸 が出てすごく綺麗でした。
対する月明かりというのは太陽の光を反射している一方方向からの光で、言ってみればレフ板なので、山を映し出すには本当に良い照明なんですよね。
日中の強い光では山がノッペリして見えますが、淡い月明かりに照らされた陰影のある山は格好良く見えますよね。
月もだんだん昇ってくると山を照らす角度の変化で陰影が深くなったりして、山の表情がどんどん変わってくるので、そういうのも含めて楽しんでもらいたい。
だから山があるっていいんですよ!
*上高地公式 WEB ではトップページに月齢や高度など現在の月の様子を表示しています。
上高地にお越しの際は是非参考にしてみてください。
コロナ前は、有料のものやボランティアも含めて星空イベントは年間200回以上やっていました。でも我々はイベント自体を独占してやりたいわけではなくて「星を見ることがイベント化されることを促して星空ビジネス人口を増やしたい、そういう世の中にしたい」というのがあって、まずは自分達でやろうということなんです。
我々が楽しそうに、しかも収益が上がるような感じでやっていれば、同じようにイベントをやりたいと思う人たちがきっと出てくると思うんですよね。 全国でイベントが盛り上がって、星がちゃんとビジネスになることを示してあげる。そう しないと「星を見せる」が普及していかないですからね。
上高地はすごく季節を感じられる場所だと思います。特に秋、9月後半から10月11 月にかけての時期は一気に紅葉(黄葉)が進んで、山から下りてくるのが見られるし、さらに雪が降るとカラマツの黄葉と雪山とのコントラストが見事だし、季節の進み具合を感じることができますよね。
実は星空にも季節感があって、春の大曲線、夏の天の川、秋の四辺形、冬は大三角 やオリオン座なんかが有名ですけれど、山や自然の季節を感じてもらうのと合わせて 星座でも季節の移り変わりを感じてもらって、その対比を楽しんでいただきたい。
星座を見て「ああもう冬だねぇ」「もうすぐ春が来るねぇ」なんて言えるような、そういう人たちが増えてくるといいなぁと思います。それも星を見る楽しみの一つなんじゃないでしょうか。
日本の屋根とも言われる長野県は平地でも標高が高く、山岳地帯や高原エリアは空気も澄んで辺りは漆黒の闇。八ヶ岳・野辺山・阿智村・駒ヶ岳・美ヶ原・乗鞍高原などなど、星を見る環境が整っているスポットが数多く存在します。
そして、標高1,500m・周りを3,000m級の山々が囲む上高地。当然のことながら星空観察の妨げとなるような余計な灯りは一切ありません。キャンプであれば、自分の好きな時間に好きなだけ星空を見ていることができます。大地に横たわり満天の星空を一晩中眺めていることだって、眠気を我慢すればできちゃいます。
でも、上高地で星空を楽しむにはキャンプが絶対条件というわけではありません。それぞれの宿泊施設から一歩外に出れば誰でも星空を見ることができますし、開催日は限られますが、星空観察会などに参加して望遠鏡を覗いてみれば、星がもっと身近に感じられるはずです。
『多事多端な毎日の中、ほんのひと時だけでも自分自身を解放してあげなさい。星を見る、山を見る、花を愛でる、風を感じる、野鳥の声を聞く...、そんな時間も今を生きるあなた達には大切な時間ですよ!』
そう語りかけているかのように、今宵も星は静かに瞬いています。
美しく咲き誇る可憐な花々
空を覆う原生林に野鳥の声が木霊する
川の流れは悠久の時を刻み
望む彼方に数多の星が煌めく
遠く連なる雄々しい峰は
鏡にも似た水面にその姿を映している
覗いてみましょう、神秘の上高地!
そこには感動の世界が果てしなく広がっています。