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上高地を楽しむ

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自然の営みに興味津々…河童橋から明神へ

ガイドと歩く上高地 ~ネイチャーガイド ファイブセンス~

自然の営みに興味津々…河童橋から明神へのイメージ
6月初旬の上高地。河童橋周辺や小梨平あたりにはミヤマザクラやコナシの白い花が清楚に咲いています。平地では夏を思わせるような気候でも、ここ上高地はひんやりと清々しく、平地よりは2ヶ月ほど遅い春を迎えています。

さあ、明神をめざして上高地散策のスタートです!

生き物たちの生態を垣間見ながら…

時刻は朝8時半。空は青く澄みわたり穂高連峰の稜線もくっきりと見えています。今回案内していただくのはネイチャーガイド・ファイブセンスの人気ガイド山部茜さん。ガイドネームは『さくら』さんだそうです。

五千尺ホテル上高地前を出発し、六百山の伏流水が湧き出る清水川にやってきました。川の脇に木の皮がむけたヤナギがありました。エゾヤナギです。サルが食べた跡でよく見ると歯形がついています。
上高地には10種類以上のヤナギがありますが、中でも有名なのはケショウヤナギ。柳絮(りゅうじょ)という小さな種の付いた綿毛が宙を舞っていました。もう少し経つとまるで雪が降っているかと思うくらいたくさんの柳絮が舞うこともあるそうです。

桜というとソメイヨシノの淡いピンクの花をイメージしますが、この時期上高地で咲いていたミヤマザクラは白い花を付けています。華やかさには少々欠けますが、周りの緑との対比で鮮やかに白が浮き出ていました。
道沿いに紫色の花を見つけました。「これはラショウモンカズラで細長い花の奥に蜜を溜めています。紫色はハチに見えやすいようで、働き者のハチに効率よく花粉のやり取りをしてもらえます。」とさくらさん。
それぞれ花の形も色も特徴がありますが、これも虫たちにアピールする植物たちの知恵なんでしょうね。

興味深い話は尽きない、有意義な2時間

小梨平の先にある風穴(ふうけつ)を過ぎ、しばらく歩くと起伏のある道が続くところがありました。梓川に流れ込む沢は雪解け水や雨水とともに大量の土砂を運んできます。そうやって運ばれてきた岩や砂が長年にわたり堆積して丘のようになったのだそうです。
「このように周囲より高いところを流れるようになった川を天井川と呼んでいます。白い砂は花崗岩で、梓川に流れ込んで水の青さを創り出す一つの要因にもなっています。」

遊歩道沿いの視界が開けたところから明神橋が見えました。
「明神橋も河童橋も吊り橋で橋脚がありません。これは梓川の流木が引っかからないようにしているんです。帝国ホテル付近にある田代橋・穂高橋は物資などを運ぶ車両も通るので吊り橋ではありませんが、中洲で二本の橋をつないでいるのでやはり橋脚がないんですよ。」
植物や動物、上高地の地質の話などここでは紹介しきれない程たくさんの興味深い話を聞きながら、ふと時計を見れば午前10時半。目的地の明神館前で現地解散となりました。
ここからさらに足を延ばして徳沢・横尾方面に行くも良し、あるいは明神橋を渡り明神池に立ち寄って梓川右岸の遊歩道を進み、岳沢湿原を通って河童橋まで戻るも良し。いずれのコースも上高地の魅力満載です!

「一度来てみたかった憧れの地!」 「何べん来てもええところですわ!」

今回ガイドしていただいたのは、河童橋から梓川左岸を歩いて明神までの2.5kmほどのコース。単純に移動するだけなら1時間もかからない道のりですが、2時間余りかけてゆっくりと話を聞きながら歩きました。

大阪からお越しの男性は「上高地はこれで4回目、いつもは家族や友達とやけど、今回は一人で。学生時代に山に登っていて親しみがあるし、何べん来てもええところですね。雪のある山はホンマ綺麗ですわ!写真撮っても水が青いから写真が映えるしね。田代湿原が特に好きですね。」「昨日も大正池からイケメンのガイドに案内してもらってね。ファイブセンスのガイドさんたちは色んなことよう知っていて(参加して)良かったですわ。」ザ・パークロッジ上高地にもう一泊するということで、新緑の上高地を満喫しているご様子でした。

神奈川県からお越しの素敵なご夫婦。若かりし頃山岳部のお友達と一緒に槍ヶ岳に登って以来という奥様、ご主人は初めての上高地とのことでした。
「定番の河童橋と穂高連峰の写真を見ていて、上高地には以前から一度来たいと思っていましたが、思った以上に自然が素晴らしいですね。花もそうですし、森に響き渡る鳥の声とかね。」「せっかく来たんだから、ガイドの方に話を聞きながら歩きたいなと思って参加しました。私達だけで歩いていたら気づかないところも説明していただいて、花の名前も教えてもらったし、花崗岩や天井川の話なんかもね。上高地をよく知ることができて良かったです。」今回は一泊での上高地。また違う季節にも来てみたいとおっしゃっていました。

ネイチャーガイド ファイブセンス  ディレクター/山部 茜さん(ガイドネーム/さくら)

「自然環境保全を学ぶ専門学校にいたんですが、学校の先輩がちょうど五千尺ホテルのガイド部門の立ち上げに関わっていて、それでこの仕事をすることになりました。今年で13年目になります。」
「お客様に上高地を楽しんでいただくのが第一だと思っています。お客様の興味も様々ですし上高地も魅力の多いところなので、会話の中から探りながらマッチングするように心がけています。主役はあくまでもお客様と上高地。その間を取り持つのがガイドの役割だと思います。」
「上高地の魅力は水の美しさが一番ですね。私は岳沢湿原が特に好きです。人影もまばらな朝夕の時間帯は水の音と風の音だけがして、森の中にいるっていう感覚を味わえますから。」
「雨の日だからこそ見られる情景もあります。葉っぱが水に濡れるとすごく綺麗なんですよ。水をポロポロと弾く葉っぱとかもあって…。雨をよける花の姿とか、梅雨時の生き物たちの工夫なんかをご紹介できます。上高地は場所でも時間でもどこを切り取っても何かしらの一押しポイントがあるので、素晴らしいところだと思いますね。」

花や鳥や森の木々などこの大自然に住む生き物たちを「この子たちは…」という言葉で説明する『さくら』さん。その姿はまるで自分の家族を紹介するかのようで、ちょっとした変化にも気づく母親のような温かさも感じました。

2時間かけてゆっくりと歩くベーシックなガイドツアー。参加されるお客様の興味や関心に添って分かりやすく解説をしてもらえます。初めての方はもちろん、より深く上高地のことを知りたいリピーターの方も、豊富な知識の引き出しを持つファイブセンスのガイドさんたちと一緒に是非歩いてみましょう。きっと上高地のことがもっと好きになるはずです!人気のガイドツアーなので、泊りでも日帰りでも日程が決まったら早めのご予約がお勧めです。

■お申し込み・お問い合わせ
ネイチャーガイド ファイブセンス
〒390-1516 長野県松本市上高地4468「五千尺ホテル上高地」内
TEL 080-8808-5466
https://fivesense.guide

(2019年6月13日掲載)
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