全長約4km、片道約80分。河童橋から大正池までは往復3時間ほど、朝出発すればお昼前には戻ってくることができます。梓川の流れと焼岳を眺めながら進む「梓川コース」と、森林浴しながら木道を歩く「林間コース」の2コースがあり、春のおすすめは後者。木々の命がいっせいに躍動し始める、芽吹きの季節を楽しんでみてはいかがでしょうか。
河童橋をスタートしたら、まず梓川右岸を進みウェストンレリーフを見学。背後には霞沢岳と六百山の眺望が仰げ、絶景のポイントです。田代池より道の所々に立つ木製の解説板を読みつつ、林間コースへ。梓川コースとの分かれ道には、右手にニッコウキスゲ群生地が。苔むした大地に降り注ぐやわらかな陽射しが、贅沢な気分にさせてくれます。田代湿原はレンゲツツジとサギスゲなど、6月中旬~7月上旬まで色とりどりの花々で賑わいます。湿地帯を渡る桟橋を経て、マガモとイワナの待つ大正池を右に眺めたら、もうすぐ大正池バス停。河童橋まで戻るときは、梓川コースを辿ってみてはいかがでしょう。
大正池⇄上高地バスターミナル
河童橋から明神まで梓川右岸にのびる、片道1時間ほどの探勝路。自然研究路や、小梨平から上る左岸よりも訪れる人が比較的少なく、のんびり歩けます。河童橋から程なく残雪の前穂、岳沢の胸に迫る風景が満喫でき、出足から期待させてくれます。10分程歩いた岳沢湿原の木道には、サワラやアブラガヤの木々を背景にレンゲツツジの花が咲き乱れ、緑と朱色のコントラストに目を見張るほど。さらに歩みを進めると、原生林のすき間から六百山や穂高の峰々、化粧柳と梓川の美しい姿が望めます。カラマツやハルニレ、シウリザクラの赤い新芽の森を抜けると明神一帯。左に折れ、明神池や明神岳を仰ぎみて河童橋に戻るときは、ヤナギ類の花と新緑がまぶしい梓川左岸を歩いてみませんか。
河童橋⇄明神(梓川右岸コース)/徒歩約60分(約3.0km)
河童橋から徳沢まで、片道2時間あまり。平坦ながら長距離であるため、体力づくりはもちろん、雨具と歩きやすい靴を備えて行きましょう。晴天には鳥の歌声と梓の瀬音が心地よく響きます。ウグイスやコマドリ、コルリ、キビタキ等の野鳥に出会えるかもしれません。左に明神岳を眺めながら進み、右奥に前穂と北尾根が見えたら、もうすぐハルニレの点在する徳沢園。6月上旬には小梨とニリンソウの花が満開となり、広々とした草原にそよぐ姿を眺めれば、まるでおとぎの国に迷い込んだ気分。河童橋まで気を付けて帰りましょう。
明神⇄徳沢⇄横尾(梓川左岸コース)/徒歩約130分(約6.5km)
北アルプス・槍ヶ岳から流れる槍沢を源流に、山々の湧き水を集めて流れる梓川。日本でも有数の渓谷美を上高地にもたらし、下流では松本に広がる沃野を満たして奈良井川と合流、犀川となります。
梓川には人々の営みに密着した様々な顔が息づいています。江戸から明治にかけて上高地を仕事場としていた杣人(きこり)は、切り出した木材の運搬路として利用していました。昭和になり建設された発電所は電力源として梓川の水を利用し、稲核・水殿・奈川渡の3ダムから放たれる安定した水量は、下流の水田を潤しています。
太古から変わらぬ風景を織りなす上高地の中で、今もゆったりと時を刻み続ける梓川。心地よいせせらぎ、そして冷涼な清流はすべての風景と調和しています。絶えることの無いその流れは、上高地の全てを潤す生命の源なのです。